毎日なんかかんか

日々の暮らしと読書の記録

村上春樹『羊をめぐる冒険』

ウィルスだ除菌だ買占めだと世間が騒がしい。

こういう時は、家でゆっくり本を読むに限る。

 

 村上春樹の『羊をめぐる冒険』は、私の大好きな本。

高校生の時、親しかった友人に勧められて『ノルウェイの森』を読んだが、その時は主人公のスカした感じや、いわゆるハルキ節の語り口調に馴染めず、それ以来、村上春樹の作品を敬遠してしまっていた。

でも、大学生になったある日『羊をめぐる冒険』を読んで、一気にその世界に引き込まれた。

何度読んでも大好きな本。

この本を読むと、新鮮な野菜を買って、よく冷やしてパリッとしたサラダを作り、たくさん食べようという気持ちになる。

大げさに言えば、しっかり生きようという気持ちになる。

こういう本が一冊手元にあると、”自分の芯”みたいなものを確認することが出来て心強い。

 

 

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  • あらすじ

主人公「僕」は、29才の男性。物語は、妻が出ていくところから始まる。喪失感を抱えながらも、仕事を通じて知り合った耳専門モデルの年下のガールフレンドも出来、友人と共同経営している広告会社での仕事をこなし、毎日規則正しく暮らしていた。そんな折、右翼の大物の秘書と名乗る男が事務所を訪ねてくる。「僕」が手掛けた広告(ある企業のPR誌)に使用した写真に写る、”背中に星形の斑紋を持つ羊”を2ヶ月間で探し出せという。実はその写真は、もう何年も会っていない友人「鼠」から送られてきたものだった。「僕」は戸惑いつつも、ガールフレンドと共に、羊を探す旅にでる。

 

  • この本のいいところ

 その1。架空の物語だと感じさせない力。あらすじを書いていても思うが、かなり荒唐無稽の現実離れした話にも関わらず、「現実にはありえないことだ」と思わせない説得力。羊の着ぐるみを着た男だの、羊に憑かれるだの、現実にはありえないだろうことでも、「もしかしたら…」と思ってしまう。終始、違和感を感じさせない作りがすごい。それは、情景や登場人物たちの詳細な描写や、表現力で支えられているのだと思う。神は細部に宿るというやつ。「あー、こういう奴いるよな」とか「ここ、行ったことある気がする」と文章で感じさせることができるってすごいなあ。

 

 その2。圧倒的な語り口。物語にグイグイ引き込まれる!村上春樹スティーブン・キングは私の中で2大ストーリーテラー。とにかく面白く、続きが気になる。中だるみや尻すぼみになることなく、最後までこの吸引力が続く本ってなかなか無いと思う。この本を読んでいるときは、通勤中何度も駅で降り過ごしそうになるので危険。(実際何度も降り遅れた。)

 

その3。魅力的な登場人物。「大物の秘書」「いるかホテルの支配人」「羊男」…。脇役でも輝いている。特に「羊男」がお気に入り。時々急にヒステリックになるところもハラハラしてしまう。

 

  • おいしそうな料理の数々

 村上春樹作品に出てくる食べものは、どれもおいしそうだけれど、特に「羊をめぐる冒険」の料理は特にお気に入り。

 よく冷えたトマトとインゲンのサラダ、羊博士が食べるスープとサラダとロールパンと肉団子、ガールフレンドが作ってくれたクリームシチュー、ハンバーグステーキ、手作りのパン、鮭の缶詰とわかめとマッシュルームのピラフ…などなど。お腹が空いてきた…。

 

 

1982年に刊行されたとは信じられないくらい、いつ読んでも全く古さを感じません。

日々の生活に何だか物足りなさを感じている人や、悲しい出来事があった人におすすめしたい。

というか、こういう感情を感じない人はいない訳で…。

つまりは全人類におすすめしたい本です。