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【映画】ブレイン・ゲーム アンソニー・ホプキンスの凄味

ひさしぶりにAmazonプライムで映画をみた。

なんとなく選んだ『ブレイン・ゲーム』。

主演アンソニー・ホプキンス。製作総指揮も務めているらしい。

羊たちの沈黙』や『セブン』のテイストが混ざったような雰囲気で、このあたりの映画が好きな人なら楽しめるのではないかと。

私自身も、思いのほか、楽しめました。

(但し、後述するように上記2つのようなサイコホラーではないので、それを期待する人は注意!)


 

 

○あらすじ

連続殺人事件を追うFBI捜査官ジョーとその相棒コウルズは、捜査に行き詰っていた。

事件の共通点は3つ。

①証拠を一切残さない、②被害者の頸椎をアイスピックで一突きする手口、③被害者は全員不治の病を患っていたこと。

捜査官ジョーはかつての同僚のクランシー博士(アンソニー・ホプキンス)に協力を仰ぐ。クランシー博士は、予知能力という特殊な能力を持っていたが、愛娘を病で失って以来、人付き合いもなくひっそりと山奥で暮らしていた。

一旦は断りながらも、事件に強く引き付けられ、捜査に加わったクランシー博士。

やがて彼は事件の影に、自身よりも優れた予知能力を有した容疑者(コリン・ファレル)の存在に気付く。

 

アンソニー・ホプキンスが博士というだけで・・・

どうしてもハンニバル・レクター博士がチラついてしまい、FBI捜査官を裏切るのではないかという不安がよぎり、どうしても集中できない。笑

あらためて『羊たちの沈黙』ってすごい影響を与えてくれた映画なのだなーと思いました。

この映画でもやっぱりアンソニー・ホプキンスの存在感が素晴らしくて、諦念を抱えたクランシー博士の佇まいが心に残る。

そして、『羊たちの沈黙』のクラリスジョディー・フォスター)は、気は強いけど知性と弱さが同居した女性で礼儀正しかったのに対し、この映画のコウルズ(ジョーの相棒の女性捜査官)が、アンソニー・ホプキンスに無礼な態度を取る取る・・・!

お前・・・!やめとけ!殺されちゃうぞ!と終始ヒヤヒヤさせられました。

アンソニー・ホプキンス=博士」というだけで、どうしても100%捜査官側の人間と思えない私。

そして、おそらく制作者もそれを意識していて、ストーリーも一捻りあって面白かった。

 

○邦題と原題問題

昨今よく問題になる邦題の問題。

個人的に、邦題は必要ないのではないかと思ってしまう派。

今のこの時代、分からない単語も一瞬で調べられるでしょ。

変な邦題で色を付けられてしまうより、原題タイトルのエッセンスを大事にした方がいいような気がする。

この映画の原題は「solace」。慰め、とか慰安という意味。

確かに「solace」は日本人に馴染みのない単語だと思うけれど、『ブレイン・ゲーム』という邦題ではこの映画のテーマがうまく伝わらないような気がした。

ブレイン・ゲーム』だと、何というか”知恵くらべ”的な要素が強調されてしまって、邦題だけ見ると、『セブン』のようなサイコホラーを期待してしまうよね。

中盤までは『セブン』のような雰囲気あるから、サイコホラー好きの人も楽しめるとは思うけど・・・。

 

○感想「私だったら世捨て人を選ぶ」

※ネタバレがあるので未見の方はここから読まないでください※

 

原題の通り、この映画のテーマは「慰め」。

自分がもしクランシー博士であったらどうするか、映画を見る人は迷うだろう。

「殺人=悪」なのか。

アンブローズ(コリン・ファレル)の殺人の目的は、快楽のためでもなんでもなく「安楽死」。

しかも本人のためだけではなく、周りの同僚や家族のために「殺してあげている」のだ。

心身の苦しみや、周りの人間の悲しみ、経済的事情、全てわかってしまうが故の能力者の苦悩。

ラストシーンで、クランシー博士の額にアンブローズと同様の傷があったこと、別居中の妻との関係修復を選んだような描写があったことから、クランシー博士は、アンブローズの跡を引き継いでいくことが暗示されているように感じた。

クランシー博士がもしもアンブローズの跡を引き継がないならば、妻と関係修復したりせず山奥で暮らすと思うんだよなぁ。

私だったら、人間と関わって生きることはもう無理だと諦めて、一人で暮らすわ。

慰めを与える人間として生きるなんて、とんでもない重荷。

見る人それぞれ結末の捉え方が変わると思う。

ただ、アンブローズという人間がよく分からなくて、もっと彼の事情(安楽死を選んだ経緯とか、自分がこの役割を続けられないと感じた理由とか)をもっと掘り下げてくれたらアンブローズとクランシー博士双方に感情移入できただろうな、とそこが少し残念に感じたところ。

アンブローズさんの選択、理解できるから、なおのこと。

いろんな人の感想を聞いてみたくなる映画でした。

 

 

 ↓そして、『羊たちの沈黙』を見返したくなった。やっぱりレクター博士サイコー!