毎日なんかかんか

日々の暮らしと読書の記録

スティーヴン・キング『グリーン・マイル』

トム・ハンクス主演で映画化もされたことから有名な『グリーン・マイル』。

映画は未見ながら、いつも読もう読もうと思っていた作品。

 

○おすすめポイント

この本のおもしろいところは、伏線が張り巡らされたストーリーはもちろんなんだけど、それに加えて刊行形態に特徴があるところ。

全6巻なのだが、1冊1冊がとても短い!

これは、毎月1巻ずつ分冊刊行したことに由来する。

(日本では連載小説ってそこらじゅうにあるが、アメリカでは基本的にそういう形態をとることはほとんどないのだそう。)

前書きによると、ディケンズの作品の大部分が分冊形式で出版されたことにインスピレーションを得て、このような形態で出版することを決めたとのこと。

しかも、出版前に物語を書き終えることなく、刊行に合わせて執筆していったのだとか。

これって、もしかしたら途中で書けなくなってしまう可能性もあるし、作家の力量が試されるチャレンジングな取組みだよね。

でもその甲斐あって、この作品はただ単純に長編を6分割したのではない、続きが読めないという、ある種の不安定感が読者にも伝わる。

ストーリー自体の謎めいた不穏な空気と、この出版形式による不安定な感じが、読者にうまく作用して、この物語をより魅力的な作品にしているように感じる。相乗効果。

1冊毎に山場あり、伏線らしき謎めいた描写あり、本当にエキサイティングな作品なのだ。

毎巻毎巻、続きが気になって仕方ない終わり方をするのも見事。

6冊分、このジェットコースターを楽しめる仕組みになっているのです。

(特に3巻終盤からの加速感がすごいと思う)

一冊の小説を読むよりも、より贅沢な時間を味わえる。

スティーヴン・キング、恐るべし。

ハンカチ(手の汗と、涙を拭う用)を手元に置いて読むことをオススメします。

 

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もちろん『グリーン・マイル』は世界中で翻訳されているが、その翻訳権契約時に「この形式も作品の一部」というキングの意向を受け、一冊本として刊行せず、どの国でも毎月1冊ずつ6ヶ月連続刊行という形がとられたとのこと。

まとめないでくれて、本当にありがとう。

最近は、上下巻2冊にまとめた文庫本も出版されたようだけど、断然6巻で読むのがオススメです。

1巻1巻短いので気軽に手に取りやすいよ。

私は、図書館を利用して1冊1冊手に取りました。贅沢な数週間でした。 

 

 

○あらすじ

舞台はアメリカ南部にあるコールド・マウンテン刑務所。

死刑執行の際、死刑囚が電気椅子まで歩く通路は、緑色のリノリウムで塗装されていることから「グリーン・マイル」と呼ばれていた。

時は1932年、ふたりの少女を殺害した罪で死刑宣告を受けたジョン・コーフィという大男が移送されてくる。

主任看守のポール・エッジコムは、4人の部下とともに死刑囚房Eブロックに収監されたこの奇妙な囚人と関わることになる。

「どうしようもなかったんですよ、ボス」「もとどおりにしようとしたんですけど……手おくれだったんです」

 

 

○感想

※一部ネタバレがあるので、未読の人はご注意ください※

 

教訓 = 通路は中央部分を歩くこと。

 

こんな悲しいことがあっていいのか…。

だけど、悲しいだけではない、心の奥にあたたかい励ましを残してくれる作品。

私はミスター・ジングルズが大好き。心優しいブルータス、コーフィも。

そして、死刑囚でありながら、 どこか憎めないドラクロア

過ちを犯した人間であることは間違いないけれど、恐れながらも毅然とグリーン・マイルを歩いたドラクロア

救いようのないワイルド・ビルや、パーシーは、グリーン・マイルの中央をしっかり歩くことができなかった人間。

 

最後まで物語を読み終えたあと、第1巻を読み返さずにいられなかった。

第1巻に描かれた数々の死。

善人だろうと悪人だろうと、死は平等に訪れる。

物語中さりげなく出てくる「通路は中央を歩け」という言葉が、私達読者へも向けられたメッセージのように思えてならない。

  

ポールの孤独を想うとき、心が締め付けられるけど、それと同時に、自分も”グリーン・マイル”を自身の足でしっかりと歩いて行かなければと勇気づけられる。

人間はだれしも死という荷物を背負っており、それに例外がないことはわたしも知っている。しかし……ああ、神よ、ときに<グリーン・マイル>はあまりにも長すぎる。(ポール・エッジコム)

 

 

 ↓中古しかなさそうだけど、全6巻一冊ずつ読むのがオススメ↓


 

 

 

↓最近上下巻で刊行されたみたい。6冊手に入れるのが面倒な人は↓